とはいえ,FMEはシミュレーションRPGではなく,TPS(三人称視点のアクションシューティング)として制作されている。従来作のファンの中には,「なぜTPSで?」と思っている人も少なくないだろう。
今回4Gamerでは,FMEの制作の経緯や独自性,楽しみ方などについて,同作のプロデューサーを務める橋本真司氏にインタビューする機会を得た。シリーズのファンはもちろん,アクションシューティングファンにとっても興味深い話が聞けたので,ぜひ目をとおしてほしい。
「フロントミッション エボルヴ」公式サイト
FMEを世界に広げていく以上
TPSというジャンルにするのは必然だった
本日はよろしくお願いします。最初に,なぜフロントミッションシリーズの新作をTPSとして制作することになったのか,その経緯を教えてください。
橋本真司氏(以下,橋本氏):
まずフロントミッション(以下,FM)の歴史として,1995年に初代FMを作ったあと「FRONT MISSION SERIES GUN HAZARD」という,横スクロールのアクションシューティングゲームを出しているんですね。そして,1997年に「FRONT MISSION2」を出して,その後に「FRONT MISSION ALTERNATIVE」というRTS(リアルタイムストラテジー)を発売しています。
また,残念ながらサービス終了となりましたが,直近でも「FRONT MISSION ONLINE」というアクション要素の強いオンラインゲームもありました。
4Gamer:
全体のラインナップを見ると,決してシミュレーションRPGだけのシリーズというわけではないんですね。
橋本氏:
はい。FMシリーズは,実は今までにもいろんなジャンルに挑戦してきているんです。ですから,今後すべてのシリーズ作品が,FMEのようにTPSになるわけではないんですよ。
FMEはヴァンツァーというロボットが持つ,色々な可能性の一つとして存在する作品,と思っていただければいいと思います。もちろん,シミュレーションRPGとしてのFM新作も作りたかったのですが,今回はFMEの開発に専念しました。
4Gamer:
なるほど。今回TPSというジャンルを選択したことは,やはりグローバルな展開を考えてのことでしょうか。
橋本氏:
そうですね。PCのほか,PlayStation 3,Xbox 360というHD機向けに制作する以上は,コストもかかりますので,当然ワールドワイドで売ることが重要になります。そうなってくると,ジャンルもワールドワイドで受け入れられるものにする必要がありました。
そういった理由から,FMEは世界的にメジャーなシューターというジャンルで作ることを決めたんです。FMEを皆さんに知ってもらうことで,FMシリーズを世界的に有名なブランドとして育てていきたいですね。
4Gamer:
確かにTPSならば,海外のゲーマーにも受け入れられやすいですね。
ところでFMEは,海外のデベロッパが制作していますが,これは初期段階から決まっていたのでしょうか?
橋本氏:
最初はとくに決まっていなかったんですけど,開発が始まった3年前の時点では,スクウェア?エニックス社内も含めて,国内でFPSやTPSを専門に手がけているチームが少なかったんです。
そこで,今回は海外のデベロッパと組んだほうが得策だろうということになり,Double Helix Games(ダブルへリックスゲームス)と一緒にやらせてもらうことになりました。
4Gamer:
海外には,FPSやTPSに強いデベロッパがたくさんありますが,そうした中,Double Helix Gamesに決めた特別な理由はありますか?
橋本氏:
実は,色々なデベロッパに当たってはみたのですが,ラインの空き状況など,さまざまな事情があって,なかなか「これだ」というところが見つからなかったんです。さまざまな条件を鑑みた結果,最終的にDouble Helix Gamesに決まったという感じですね。そういう意味でいうと,かなりタイミングも関係していたと思います。
4Gamer:
なるほど。Double Helix Gamesは,「The Golden Compass」「The Matrix: Path of Neo」「The Da Vinci Code」「Silent Hill: Homecoming」などなど,版権モノで実績のあるデベロッパですし,FMEにとっても相性がよさそうですね。
ところでキャラクターデザインは,明らかに日本向けという雰囲気もないですし,ガチガチの洋ゲーテイストでもないですが,日本で担当しているのでしょうか。
キャラクターに関しては,設定だけを日本で作って,それを元にシンガポールのデザイナーさんにお願いしています。まぁ,これに関しては色々なご意見があると思うんですけど,日本のファンと,ウエスタンマーケットのファンが描く“リアリティのある人物像”って,ちょっと違うと思うんですよ(関連記事)。
シンガポールのデザイナーは,色々な国のパブリッシャーと仕事をしているので,グローバルな視点を持っているところが多いんです。なので今回は,さまざまな国のニーズに対応できる,彼らのノウハウを使わせていただいた,という形ですね。
4Gamer:
実際にゲーム画面を見させていただき,日本人のデザインに近い印象を受けました。
橋本氏:
そうですね。ウエスタンマーケットに合わせたからといって,「日本人の好みに全然合わないよ」って言われたら元も子もないので,アジアとウエスタンマーケットの両方から,理解を示してもらえるようなデザインにしてもらいました。
4Gamer:
そのあたりは,さまざまな国と交流を持つシンガポールのデザイナーだからこそ実現したこと,とも言えそうですね。
橋本氏:
はい。やはり彼らは日本のカルチャーをよく勉強していると思います
引用元:三國志 専門サイト